「あめる」という方言をご存知でしょうか。北海道の一部や東北にかけて「あめる」という方言は、幅広い世代で現在も使われています。ただ、地域によっては「あめる」のバリエーションも少し違うようです。ここでは、「あめる」の意味や使い方など詳しくご紹介します。
あめるの意味
「あめる」は北海道の東部や岩手県、青森県、秋田県など東北で広く使われています。北海道から東北で使われる「あめる」の意味は「腐る」「傷む」です。食べ物に対して使う方言なのですね。
あめるを標準語に言い換えると「腐敗」
「あめる」を標準語に変換すると「腐敗」「悪くなる」「食べられない」「傷んでしまった」などと言い換えられます。食べ物が腐ってしまって食べられなくなった時に使うのが「あめる」ですが、標準語とはまったく違いますね。
あめるの漢字
「あめる」が使われる地域は広いのですが、漢字で表すことはないので、「あめる」はひらがなで書く風習が定着しています。ただし、「あめる」の起源になった由来を調べると、漢字で書いていた可能性もあります。次項で由来をご紹介しますね。
あめるの発祥、由来
食べ物が腐ってしまうことを「あめる」と言うようになったのは食べ物が変化することが由来となったと伝わっています。具体的には、穀物が発酵すると糖化して、飴のように甘くなって、質が変わります。このことから、食べ物を長期間置いておくと、変化するだけじゃなく腐ってしまうので、「あめる」=「腐る」になったのです。
また、食べ物が腐ってしまうと、水飴のように糸を引くので、それが「あめる」の由来になったという説もあります。いずれにしても、飴が関係するので、もともとは「飴る」と書いていた可能性もあります。
あめるの北海道、東北での使われ方
「あめる」は北日本の広い範囲で使われていますが、調べてみると使わない地域があったり、「あめる」の使われ方に違いがあることがわかりました。
あめるは北海道全域では使わない
「あめる」は北海道の中でも道東(北海道の東部)で使う方言です。北海道は広いですから、地域によって方言も違いがあるのですね。道東と呼ばれるのは、十勝、釧路、根室、北見などです。帯広や旭川では「あめる」を聞いたことがない人もいます。
あめるは三重県でも使われる
北海道の一部や東北地方で使われる「あめる」ですが、なぜか三重県でも同じ意味として使われています。三重県は近畿と東海の間にあるので、尾張弁と関西弁の境目でもあります。ですが、なぜか北海道や東北の方言である「あめる」が使われているのか不思議です。
東北から三重県までの間の地域では、「あめる」は使われていないのですが、三重県には伊勢神宮があります。江戸時代には伊勢参りが大ブームになったこともあるので、全国から伊勢に人が集まりました。そこでは色んな方言が聞かれたはずです。それで「あめる」が伝わったのではないかと考えられます。
あめるの意味が全く違う地域
北海道から東北では食べ物が腐ることを「あめる」と言いますが、新潟県だけは違う意味で使われています。新潟県では「はげる」「つるつるする」という意味で「あめる」を使っているのです。
なぜ新潟では「あめる」が「はげる」となったのかは定かではありませんが、一部だけで違う意味になるのは面白い反面、怖いですね。新潟では不用意に「あめる」を使うと失礼になってしまうので、気をつけないといけません。
あめるの例文
食べ物が腐るという意味の「あめる」ですが、色んな「あめる」の使い方をご紹介します。
「あめる」の例文①
東北人
(今日は暑くなるから、お弁当が腐らないように置き場所を考えてね)
(傷みやすいものを入れたの?)
東北人
東北人
(加熱した物を入れたけど、それでも腐ることはあるから)
お弁当を作る家庭での日常会話です。「あめる」の使い方としてはスタンダードですね。
「あめる」の例文②
東北人お母さん
(食べ物をクール便で送ったから、ちゃんと冷蔵庫に入れて腐らせないようにね)
(食べきれない量を送るから、腐らせてしまうのよ。でもありがとう)
息子
東北人お母さん
(そう言われても、食生活が心配だから。悪くなりそうなものは冷凍しておきなさい)
田舎から食べ物などが届いた時などには、懐かしく感じるでしょうね。
「あめる」の例文③
東北人
(早く食べないと腐っちゃうよ)
(もったいなくて食べられない。もし腐っても絶対に食べるよ)
東北人
「腐る」とか「悪くなる」という言葉が飛び交うよりも、「あめる」を使った会話の方が、少し上品に感じるのは気のせいでしょうか。
まとめ:使われている範囲がとても広い方言「あめる」
北海道の道東から東北、さらには三重県でも食べ物が腐るという意味で使われる「あめる」ですが、なぜか新潟県だけ違う意味で使われているのはとても興味深いことです。方言の歴史は不思議なことが沢山ありますね。
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