「くんろ」は方言という認識を持っている人がほとんどですが、じつはとくにどこの土地の言葉と決まっている方言ではありません。昔の田舎言葉、もしくは百姓言葉として今に伝わっています。なぜ「くんろ」が方言として多くの人に認識されるようになったのか、その理由も含めて、「くんろ」の方言の意味、由来、使い方までをご紹介します。
くんろの意味
「くんろ」は主に関東の田舎言葉として使われてきました。意味は「~ください」のように、お願いする時の語尾に使われるのが一般的です。
くんろを今でも使う地域
そもそも「くんろ」は東京、埼玉、千葉、栃木、群馬、福島、新潟など関東を含めて東北まで使われていた田舎言葉です。武士や商人は使わない言葉だったので、お百姓さんが主に使っていました。
今の東京は江戸として発展するまでは、関東平野という荒野が広がっていただけですから、田舎言葉はそのままお百姓さんの間では使われ続けていたのです。
ですが、今はほとんど「くんろ」は使わなくなっています。田舎のお年寄りでも、滅多に使う人は少ないのではないでしょうか。ただ、埼玉県の一部ではまだ名残として残っている地域があります。
くんろを標準語に言い換えると「ください」「
「くんろ」を標準語にすると「~ください」と言い換えられます。何かをお願いする時に「~してください」という時に「~してくんろ」と言っていたのです。
くんろの漢字
「くんろ」は漢字では書かずに、ひらがなのままです。あえて漢字に当てはめようとしても、適当な文字が見つかりません。その言葉自体に意味があるわけじゃなく、「ください」が訛っただけなので漢字にする必要性はなかったのでしょう。
くんろの発祥、由来
「くんろ」の由来は「ください」は変化した言葉だと考えられます。「ください」はお願いする時に使う補助動詞です。「くんろ」もお願いする時に使うので、同じ意味ですね。
ただ、「ください」には「下さい」と漢字で書くこともあります。漢字で書く「下さい」は品物などを譲り受ける時の使う実質動詞です。「食べ物を下さい」と「食べてください」では全く意味が違いますよね。「くんろ」は後者の方で使われます。
日本昔話が知られるきっかけ?
今ではほとんど使われなくなったのに、「くんろ」が方言として多くの人に知られるようになったのは、まんが日本昔ばなしでお百姓さんが使っている印象が強く残ったからではないかと推測されています。
今でも昔の民話を読み聞かせる絵本などには、お百姓さん言葉として「くんろ」はよく出てきます。とくにどこの地域の民話と限定されていなくても、「くんろ」が使われるのは田舎言葉として広まっていたからではないでしょうか。
「くんろ」と似ている訛り
「くんろ」とよく似ている言葉として「けろ」や「けんろ」という言葉があります。これも「くんろ」と同じように、「~ください」という意味です。
「くんろ」が使われていた地域よりも少し西、今の神奈川県や辺りでは「けんろ」の方を使っていました。「けろ」は「くんろ」や「けんろ」よりも親しい間柄で使っていました。
「~ください」ではなく「~くれ」という時に「けろ」を使っていたと考えれらます。
「くんろ」の例文
今の時代ではほとんど使われなくなった「くんろ」という訛りですが、少し時代をさかのぼったドラマや映画などではよく耳にします。使い方次第では、ちょっと可愛く聞こえたり、クスっと笑えたりします。
いくつか「くんろ」を用いた例文をご紹介しますので、使ってみたい方は参考にしてください。
「くんろ」の例文①
お母さん
(お願いだから、早くおきてよ、学校に遅刻してしまうよ)
(あと5分だけ寝かせてくださいよ)
息子
お母さん
(勝手にしなさい!もう知らないからね)
母と子の朝のバトルにはよくある会話ですよね。こんな会話の中に「くんろ」を使うことはまずないですが、変換すると面白いですね。
「くんろ」の例文②
妹
(そのスカートもう履かないなら私にちょうだい)
(少しだけ窮屈になっただけだから、ダイエットしてまた履くよ)
女性
妹
(そんなケチなこと言わないでよ)
女性
この例文くらいの「くんろ」なら、ちょっと可愛く聞こえる気もします。
「くんろ」の例文③
彼女
(ケーキに乗ってるイチゴだけ食べてよ)
彼氏
彼女
(ケーキのイチゴは酸っぱいから苦手。食べてください)
この例文では、「くんろ」と「くんろい」を使いました。「くんろい」は埼玉の方言で「くんろ」をちょっと可愛い言い方をする時に使います。今もたまに使っている人もいるので、首都圏内で「くんろ」が根強く残っているのは埼玉県が有力ではないでしょうか。
まとめ:昔話でおなじみになった「くんろ」
日本の昔ながらの山里の風景を素朴に描いている民話などでは「くんろ」や「けろ」のような田舎言葉がとても馴染みます。失われてつつある日本の原風景ですが、使われなくなった田舎言葉を忘れたくないですよね。
コメントを残す