「くろ」という言葉が方言だと知らない人が聞くと、色の黒のことだと勘違いしてしまうでしょう。「くろ」は静岡県や岐阜県、愛知県など東海、中部地方の一部で使われる方言です。今回は方言の「くろ」の意味や由来、使い方などを例文を用いて詳しくご紹介します。
くろの意味と使う地域
「くろ」を方言として使うのは、静岡県、岐阜県、愛知県です。意味は「端」とか「角」「隅」のことです。「くろ」を標準語にすると「隅」「隅っこ」「端」「端っこ」「角」と言い換えることができます。
くろの由来
方言「くろ」の由来は、田んぼと田んぼの間の仕切りのあぜ道のことを「くろ」と言っていたことが由来だと考えられます。田んぼの端から仕切りのあぜのことを「くろ」と呼んでいたので、端のことを「くろ」というようになったという説が有力です。
くろの漢字
田んぼのあぜのことを「くろ」と言うことが方言の由来という説から考えると、「畔」という漢字が当てはまりますが、漢字では使われることはほとんどありません。この字はあぜとも読みますが、くろとも読みます。
「くろ」を方言として使っている地域でも、あえて漢字で書く人はいませんが、当てはめるとすれば「畔」が有力です。
中部や東海での「くろ」の使われ方
「くろ」という方言は、静岡弁、三河弁、尾張弁、美濃弁など中部・東海地方では同じ「隅」や「端」の意味として使われています。若い年代の人はあまり使わなくなっていますが、ほとんどの世代で意味は理解できます。ただ、細かい地域に分けると、「くろ」が変化したバージョンもあります。
三河弁では「くろ」が変化
愛知県の三河地方とは、徳川家康の出身地である岡崎市や世界のTOYOTAのある豊田市などを含みます。三河弁は名古屋弁とは少し違う訛りがあり、名古屋よりの西三河弁と静岡よりの東三河弁に分かれて、さらに少しニュアンスが違う訛りがあります。
「隅」や「端」のことを表す「くろ」という方言は、三河弁になると「ぐろ」と訛って使う地域もあります。「くろ」でも通じないのに「ぐろ」になるとさらに難解ですよね。
「くろ」の例文
日常会話の中で頻繁に「くろ」を使う地域の方言を用いて、いくつか例文をご紹介します。
「くろ」の例文①
おばさん
(ちょっと君たち、道路を歩く時はもっと端によらないといけないよ)
女の子
(端によりたいけど、自転車が止まっててよれないんだよ)
おばさん
(そうか、じゃあ自転車は移動させるね)
「くろ」という言葉以外にも、三河弁や美濃弁が混ざっています。ちなみに自転車のことを「けった」というのは昔からの方言というよりも、造語に近い言葉です。
「くろ」の例文②
お母さん
(ほこりは隅に集まるから、隅をきちんときれいにしないといけないよ)
(隅に掃除機かけてやってますよ)
息子
お母さん
(掃除機だけじゃなくて、隅の仕上げはほうきをかけなさい)
掃除のやり方をレクチャーする時には、かなり「くろ」が多発しますね。
「くろ」の例文③
女性
(それは疲れるね)
女性
女性
(すごく細かい人。重箱の隅をつつくような人)
女性
女性
(押入の中をひっくり返して、チェックしていったよ
神経質で細かい性格の人に対して、「重箱の隅をつつく」という慣用句はよく使います。この場合でも「隅」を「くろ」に言い換えるほど、馴染んでいる方言なんですね。
まとめ:暮らしの中になじみ過ぎた方言「くろ」
岐阜県出身の芸能人が、関東で「くろ」を使って不思議な顔をされたというのは、テレビ番組で言っていました。中部、東海地方では、あまりにも普通に使われる言葉なので、方言という意識が薄れてしまいまよね。独特の言い回しが山ほどある地域なので、掘り下げるとさらに興味深い言葉が見つかるでしょう。
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