方言「ねまる」。地域によって意味が異なるの使い方と例文【九州・東北・奈良】

「ねまる」という方言は発音は同じでも、地域によって意味がまったく異なる方言です。「ねまる」という方言には、九州では「腐る」。東北では「くつろぐ」「座る」。奈良では「疲れている」という意味があり、地域でそれぞれ異なる意味で使われています。今回は「ねまる」という方言について、例文などを通して詳しく解説します。

方言「ねまる」の意味と使われる地域

「ねまる」は「九州」と「東北」で用いられる方言です。九州では料理やご飯が「腐る」という物質の状態が悪くなる意味で用いられます。「腐る」という意味から、食べ物が傷みやすい梅雨の時期によく使われます。また、「話がもつれる」ことを表す場合もあります。

それに対して、東北では「ゆっくり座る」「くつろぐ」という動作や心地よい状態の意味として使われます。全国的で異なる意味をもつ「ねまる」をポジティブな意味合いで使っています。そのため、石川県には「ねまる」という店名の懐石料理屋さんもあります。「ゆっくりくつろいでいってね」という意味が込められているのでしょう。

奈良での「ねまる」の意味は「疲れている」になります。ただ単に体がだるいという意味ではなく、疲れていて体がだるいという意味合いで使われます。また他にも「筋肉が痛い」という意味で使われる場合もあります。これはとくに奈良の高齢者に使われていて、若い人の間ではこの意味では通用しないことが多々あります。

「ねまる」は特定の県で用いられているというよりも、九州や東北全土で用いられています。

「ねまる」が方言として使用されている都道府県

・北海道
・石川
・山形
・新潟
・岩手
・富山
・奈良
・福岡
・熊本
・佐賀
・大分
・鹿児島
・長崎

「ねまる」を標準語に言い換えると

「ねまる」を標準語に言い換えると九州では食べ物が「腐る」、花が「枯れる」になります。東北では「正座する」「くつろぐ」などの動作や心理的な状態を表します。奈良の「ねまる」は「疲れる」の標準語になります。

「ねまる」の漢字

「ねまる」は「腐る(ねまる)」と「座る(ねまる)」と2つの漢字で表記することができます。前述のとおり、九州では「腐る(ねまる)」、東北では「座る(ねまる)」と漢字で表記することができるんですよ。通常、方言として使用される場合はひらがなで書くことが多いです。

「ねまる」の発祥、由来

方言「ねまる」が初めて登場する文献に松尾芭蕉の奥の細道が挙げられます。芭蕉が現在の山形県尾花沢市にある「養泉寺」を訪れた際に作った和歌に「ねまる」が掲載されているんですよ。ここで登場する「ねまる」は「くつろぐ」という意味で用いられました。

では、九州で用いられている腐るという意味の発祥はどこからなんでしょうか?それは、「日葡辞書」です。「日葡辞書」とはイエズス会が17世紀に日本語をポルトガル語に翻訳した辞典です。この辞典は長崎で1603年から1604年にかけて発行されたのをきっかけに、九州全土で「ねまる」という方言が「腐る」という意味で用いられました。

また、どうして「ねまる」は元々「座る」という意味があったのに、そこから「腐る」という意味が生まれたのでしょうか?それは「食べ物が座り続ける⇒食べ物が腐る」と言い換えられたからです。その結果、「ねまる」は九州全土で「座る」ではなく「腐る」という意味で用いられました。

「ねまる」が使われている松尾芭蕉の奥の細道を詳しく見てみよう

前述のとおり、方言「ねまる」は松尾芭蕉の奥の細道に使われています。その一句がこちら。

「涼しさを宿にしてねまるなり」
(涼しく過ごせるお屋敷で、まるで自分の家にいるかのようにくつろげる)

これは芭蕉が清風の宿で数日泊まり、旅の疲れを癒してくれたお礼にこの一句を詠みました。この和歌が刻まれている句碑が山形県の尾花沢養泉寺にあります。みなさんも山形県を訪れた際は松尾芭蕉の句碑を見に行ってみるとよいですよ。

「ねまる」の例文を見てみよう

方言「ねまる」は九州地方で使う場合と東北地方で使う場合とでは意味合いが全く異なります。九州地方では食べ物が「腐る」というマイナスの意味で、東北地方では「くつろぐ」というプラスの意味で使われることを意識しておきましょう。それでは「ねまる」の例文をいくつか挙げます。

「ねまる」の例文①

小学生

お母さん、このカレーおかしかニオイがしとるよ
(お母さん、このカレー変なニオイがするよ)

お母さん

あら!このカレーねまっちょるがね。もう食べなさんな
(あら!このカレー腐ってるね。もう食べないでね)

例文①での「ねまる」は食べ物が「腐る」という意味で用いられています。これは九州で使われる意味ですね。

「ねまる」の例文②

お隣さん

雨が降ってる。ねまっていかない?
(雨が降ってる。座っていかない?)

おばあちゃん

あれ~きのどくな
(あら、ありがとう)

お隣さん

コケがたくさんあるから、食べまっし
キノコがたくさんあるから、食べなさい

石川県の金沢弁で「~まっし」は「~しなさいよ」という意味で語尾に使われます。石川県では「ねまる」を「座る」として使われています。

「ねまる」の例文③

女子高生

今何してる?

女子高生

喫茶店でどやぐとでねまっているんだけど
(喫茶店で友達とくつろいでいるんだけど)

「座る」と「くつろいでいる」の両方の意味で使われています。

「ねまる」の例文④

お父さん

今日はねまってるなー風呂掃除おとろしい
(今日は疲れが残っていてだるいなー風呂掃除面倒くさいな)

お母さん

今日家事何もしてないよね。いつまでもいちびんな
(今日家事何もしてないよね。いつまでもふざけるな)

お父さん

・・・・・

お母さん

風呂掃除はよせんかいら
(風呂掃除早くしろよ)

とある奈良県のとある夫婦の日曜日の会話。奈良県では「ねまる」はけっこう気軽に使われる方言です。学生なんかは午後になると「ねまるわー」と良く使っています。

日常でよく使われる方言「ねまる」

方言「ねまる」は松尾芭蕉の奥の細道にも掲載されていたり、「日葡辞書」にも掲載されていています。このことから、方言を学ぶことは古文や歴史も一緒に勉強できるのでお得ですね。あと注意点として、九州地方と東北地方では「ねまる」の意味合いが違いますので、文脈で判断することを意識して使ってみましょう。

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